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2008年12月20日 (土)

2008年トヨタ・モータスポーツ・アニュアルレポート(海外編-2)

■トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム(TDP)

Tdp
 トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム(TDP)は、日本および世界のトップカテゴリーで活躍できる若手レーシングドライバーの発掘と育成、並びにレーステクニックのレベルアップを目的とする。
最もベーシックなプログラムはフォーミュラ・トヨタ・レーシング・スクール(FTRS)で、カートレース参戦経験があれば、14歳から受講が可能。
毎年(2008年実績)行われるスクールにおいて際立つ才能が認められたドライバーには、フォーミュラチャレンジ・ジャパン(FCJ)参戦のスカラシップが与えられる。
2008年シーズンは、3名(後に2名)のTDPドライバーがFCJに参戦。
技術的なアドバイスに加え、フィジカル面やメンタル面、栄養学やビジネスマナーに関してサポートを受けた。
 FCJでチャンピオン、もしくはそれに匹敵する優秀な成績を残したドライバーには、上位カテゴリーの全日本F3選手権や、ヨーロッパで開催されるフォーミュラ・ルノーなどへの参戦が支援される。
それらカテゴリーで活躍したドライバーは、さらに上位のカテゴリーでの支援が継続される。
また、国内では一部ドライバーがSUPER GTにも参戦している。

 FTRSで優秀な成績を残し、全日本F3、F3ユーロシリーズ、GP2、そしてF1へと着実にステップアップしたTDPドライバーが中嶋一貴である。
FTRS第3期生の中嶋は、06年にF3ユーロシリーズで優勝を経験し、年間7位と健闘すると、07年にはGP2シリーズに挑戦した。
国際F3000に代わるカテゴリーとして誕生したGP2は、今年パナソニック・トヨタ・レーシングのドライバーとなったティモ・グロックを含めて、その年のチャンピオンが必ずF1へステップアップするF1ドライバーのフィーダーシリーズとしての地位を確立。
頂点を目指す若手ドライバーが、世界各地から集結する競争の激しいカテゴリーである。

 そこで5戦連続表彰台を獲得するなど、シリーズランキング5位の好成績を残し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得した中嶋は、AT&Tウィリアムズのレースシートを獲得、2008年シーズンに臨んだ。
開幕戦オーストラリアGPでいきなり6位入賞を遂げた中嶋は、第4戦スペインGPで7位に入賞し、初戦での好成績が偶然ではなかったことを証明した。
さらに、屈指の難コースである第6戦モナコGPでも7位に入賞。
日本人F1ドライバーとして史上初めての快挙となった。

 中嶋は第9戦と第15戦でも入賞し、シーズン5回の入賞を果たした。
すべてのドライバーにとって初挑戦となるシンガポールで好成績を残したことは、中嶋の潜在能力の高さを示す好例。
10月の第16戦日本GP前には、09年もAT&Tウィリアムズで過ごすことが発表になった。

 07年にF3ユーロシリーズで活躍した小林可夢偉は、08年にGP2にステップアップ。
前半戦となるGP2アジアシリーズでは、5大会中で2勝を挙げる好成績を残した。
続くヨーロッパでのシリーズでは、スペイン大会で初優勝を遂げたものの全体的に歯車がかみ合わず、ランキング16位でレースを終えた。
10月には08-09年のGP2アジアシリーズが開幕しており、第2大会ドバイで見事に優勝を飾った(第1レース)。

 好成績を出すのに越したことはないが、TDPの本来の目的はドライバーの育成にある。
その意味で、小林が壁にぶつかりながらもそれを乗り越える姿勢を見せたことは評価に値する。
中嶋もユーロF3、GP2参戦時には壁にぶつかっており、短期間でそれを乗り越えたことが現在の地位につながっている。

 同じことはF3ユーロシリーズに参戦した大嶋和也にも当てはまる。
07年に全日本F3選手権でチャンピオンを獲得した大嶋は、中嶋や小林の後を追うようにしてヨーロッパに飛び出した。
シーズン終盤のバルセロナ大会で初優勝を遂げたものの、シリーズランキングは19位。
厳しい競争の世界で自分の思いどおりの走りができる環境をどう構築するか。
成績に結びつけることと同時に、環境適応力を身につけることの重要性を学んだ。
 ヨーロッパでは中嶋、小林、大嶋の日本人ドライバーに加え、F3ユーロシリーズでヘンキ・ワルドシュミット(オランダ)を、フォーミュラ・ルノー2.0ではアンドレア・カルダレッリ(イタリア)を支援。
中嶋や小林ら、TDPドライバーの活躍が目立つようになるにつれ、海外トップチームやドライバーからのTDPに対する注目度が高まっているが、これなどは、優秀なドライバーの起用にも大きく貢献する好ましい現象だ。

 国内に目を移すと、中嶋とともに07年のGP2シリーズに参戦した平手晃平が活動の場を移し、フォーミュラ・ニッポンに参戦した。
FTRS第2期生の平手は、02年にイタリア・フォーミュラ・ルノートヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム(TDP)左より中嶋、大嶋、小林、石浦に参戦して以来、5シーズンをヨーロッパで過ごしたが、そこで身につけた本場仕込みの激しく鋭い走りを日本のトップカテゴリーに持ち込み、各ドライバーを強く刺激した。
第5戦鈴鹿の第2レースで初優勝を達成。
シリーズランキング4位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。

 07年に全日本F3選手権でシリーズ4位の成績を残した石浦宏明もフォーミュラ・ニッポンにステップアップ。
シリーズランキングは16位だった。
一発の速さには定評があり、09年シーズンの活躍が期待できる。

 国内では、平手、石浦以外にも6人のドライバーが、上位カテゴリーへのステップアップを目指した。
全日本F3選手権では、国本京佑が2位、井口卓人が3位、ケイ・コッツォリーノが6位をそれぞれ獲得。
また今年から新設されたナショナルクラスでは山内英輝がタイトルを獲得した。
そして国本は、11月に行われたマカオGPのF3レースで、ヨーロッパから来た才能あふれる若手ドライバーを相手に、見事な優勝を飾った。

 FCJにおいては、国本雄資が16戦中8勝という圧倒的な強さでタイトルを獲得。
松井孝允は4位でシーズンを終えた。
また、SUPERGTにおいては石浦がGT500で、平手と国本京佑と井口がGT300でシリーズを戦い、第3戦で平手/国本のコンビが双方ともルーキーながら初勝利。
なかでも国本京佑は19歳4ヵ月での勝利で、最年少優勝の記録を塗り替えた。

 08年のTDPは支援するドライバーが成績という目に見える形で結果を残すと同時に、ドライバーのメンタルな部分を強化し、世界に通用する精神の強さを醸成している。
また、ドライバー育成を継続することにより、将来のトヨタのモータースポーツ活動に有意義に作用することが期待できる、周囲の高い評価を確立している。

Kunimoto 第55回マカオGPで優勝した国本とチームスタッフ。

 

 

■グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード

Gw
 

伝統のヒストリック・モータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」が2008年7月11日(金)から13日(日)にかけて、イギリス南部チチェスターで開催された。
 1993年に開始されて16回目を数える同イベントに、トヨタは02年より参加しており、07年はトヨタ・モータースポーツ50周年を記念し、メインスポンサーとして大々的な展示を行った。
7回目の参加となる08年も、トヨタ・モータースポーツの歴史を彩ってきた名車が参加し、集まった多くのモータースポーツファンにその勇姿を披露した。

 また、トヨタは「F1ブース」でトヨタF1カー関連の展示を行うとともに、グッドウッド・テクノロジー・パビリオンで過去のコンセプトカーを展示。
特設ステージでは07年東京モーターショー出品車である、一人乗りのパーソナルモビリティの可能性を追求したコンセプトカー「i-REAL」によるデモンストレーションを行うなど、新しいモビリティの形を提案、集まった観客の注目を引いた。

 08年のフェスティバル・オブ・スピードには、ル・マン24時間レースや世界耐久選手権で活躍したトヨタTS010、WRCで99年にマニュファクチャラータイトルを獲得したトヨタカローラWRC、そして07年の活躍も記憶に新しいF1カートヨタTF107がデモ走行に出場。
トヨタTS010は鈴木利男、トヨタカローラWRCはユハ・カンクネン、トヨタTF107は小林可夢偉がドライブし、トヨタ・モータースポーツの歴史を形作ってきた名車を観客にアピールした。

(参加ドライバーコメント)
トヨタTS010 ドライバー:鈴木利男

 「グッドウッドへの参加は07年に引き続き2回目になる。
07年も感じたが、すごい数の観客が来てくれて、やはりイギリスでのモータースポーツの人気はすごいな、と感心させられた。
私がドライブしたトヨタTS010は非常に調子が良く、音も最高だったので、運転していてとても気持ちが良かった。
私も現役時代はトヨタでレースを戦ってきたが、最近はトヨタが特にモータースポーツに力を入れているのが感じられ、いちトヨタファンとしてとても楽しみにしている。
今後もF1を含め、様々な国際レースで活躍していって欲しい」

カローラWRC ドライバー:ユハ・カンクネン
 「グッドウッドは他に類を見ないイベントで、いつでもここに来るのは素晴らしい気分だ。
懐かしいクルマや知人に再び会うことができる。
私にとって、トヨタとともに過ごした時間はとても大きく、素晴らしいものだった。
WRCにおける私の初めての勝利はトヨタでのものであり、その後トヨタとともに世界タイトルも獲得するなど、素晴らしい時間を過ごしてきた。
私は9年という長い期間トヨタで戦ったが、非常に居心地が良く、ともに働くのが楽しいチームだった。
トヨタは今、F1で表彰台に立ち、非常に調子が良くなってきており、チームの努力には敬意を表したい。
またいつか、今回の走行のようにトヨタ・モータースポーツの一員として貢献できたら良いと思っている。
最後になるが、今回はオベ・アンダーソンへの哀悼の意を込め、黒い喪章の入ったクルマをドライブした。
私としては素晴らしい友人を、本当に惜しい人を亡くしたという他ない。
この場を借り、彼のご冥福を心よりお祈りする」

トヨタTF107 ドライバー:小林可夢偉
 「グッドウッドには初めて参加した。たいてのサーキットは広く場所が取られて、周りは砂(サンドトラップ)などに囲まれているので、こういった緑に近いところでレースカーを走らせる機会はなく、初めての体験だった。また、観客の多さにも驚かされた。
これだけの人がモータースポーツ、レースはもとよりクルマ自体に興味があるということに、とても驚き、ヨーロッパでの、自動車文化の奥深さというものを実感した。
私は現在パナソニック・トヨタ・レーシングのサード ドライバーとして、トヨタのモータースポーツ活動の一端を担っている。
今後もこういったヒストリックカーイベントに参加し、私としても、歴史を作っていけるように頑張っていきたい」

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受信: 2009年1月 9日 (金) 01時09分

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