日野レンジャー2台が歓喜のポディアムへ
日野自動車参戦20周年を市販車部門優勝と10リットル以下クラスの連覇で飾る
ポディアムでシャンパンを振りまく菅原照仁 (C)Hino Motors, Ltd
2011年01月17日
ダカールラリー2011、「ゴールセレモニー」
1月16日、ブエノスアイレス
1月16日、2011年ダカールラリーはアルゼンチンの首都ブエノスアイレス市内の特設会場でゴールセレモニーを行った。15日ブエノスアイレスにゴールする最終ステージを終えて同夜に正式結果が確定。これを受けて表彰を行う段取りである。この日のブエノスアイレス市内は昼過ぎまで晴天で気温も30℃以上の暑さとなったが、その後天候が崩れ、嵐のような激しい風雨に見舞われた。それでも総合展示場「ラ・ルーラル」に設けられた会場には多数の観客が詰めかけ、競技車がポディアムに上がるたびに盛んな歓声が上がっていた。日野チームスガワラの日野レンジャーが登壇したのは午後3時半すぎで、まずトラック部門総合9位で市販車部門優勝および排気量10リットル以下クラス優勝を果たした2号車がメカニックたちとともに登壇。大きな拍手とともに菅原照仁、鈴木誠一は日本から駆けつけた日野自動車の近藤詔治代表取締役会長、藤井恒彦専務取締役とがっちり握手をかわした。続いて総合13位で市販車部門3 位、10リットル以下クラス2位を獲得した1号車もポディアムへ。菅原義正はラリー責任者のエティエンヌ・ラビーニュと抱擁を交わし、杉浦博之ナビ、メカニックたちとともに笑顔で歓声に応えていた。
南米での開催3年目となった今大会はときには3000mを超える高標高や急な登りが延々と続く砂山越え、最高気温50度にも達する灼熱の砂漠など、以前のアフリカとはまた違った過酷なステージが15日間約9500kmにわたって設定された。また、トラック部門には大型改造部門の常勝チーム、ロシアのカマズをはじめパワーアップしたタトラ、マン、イヴェコ、ジナフなど900馬力級の大型勢が多数出場し、中型トラック日野レンジャーで上位を狙う日野チームスガワラにとっては厳しい状況となっていた。しかしラリーがスタートすると2台の日野レンジャーは粘り強く健闘。パワー勝負の序盤戦では冷静にペースを保ち、チリに入って難易度の高い砂丘ステージが始まると一挙に順位を浮上させた。そして2号車が市販車部門の首位に立ち、1号車とともに排気量10リットル以下クラスのワン・ツー体制をかためると転倒車が続出するなどトラックには危険度の高い終盤のステージを落ち着いて走破。日野自動車が初参戦した 1991年大会以来20年目の節目となる今大会で見事市販車部門優勝と10リットル以下クラスの1・2位を獲得した。改造部門の大型車勢に対し、市販車部門仕様の排気量10 リットル以下の車両で総合9位に食い込んだ今回の結果は日野レンジャーの優れた走破性と耐久性の証左であるとともにチームの総合力の高さを裏付けるものと言えるだろう。トラック部門のスタート台数67台に対してゴールしたのは41台と同部門としては少なく、部門の完走率は61%。2輪、4輪を含めた全体の完走率は50・1%という例年にない過酷な大会であった。
激励に駆けつけた人々とともに喜びを爆発させる日野チームスガワラ (C)Hino Motors, Ltd
【コメント】
日野自動車 代表取締役会長 近藤詔治/今大会の結果は予想よりも良い成績で喜んでいます。また、成績もさることながら南米の現場の雰囲気に触れてラリーの盛り上がりを体感し、改めて活動の意義を再確認しました。今大会は日野にとって20年の節目ですが継続の力というものがあると思います。菅原さんたちの熱い想いもあって我々が続けてこられたことを良かったと思っています。
日野自動車 専務取締役 藤井恒彦/本当に全員がよく頑張ってくれました。メカニックはこれまで以上に整備作業が大変だったでしょうが、おかげで良いポジションをキープ出来ました。車両は改良点が結果に繋がった部分もありトラック部門ベスト10の上位も見えてきたように思います。それにしても69歳で総合13位に入るのはすごい。感服しました。また、日野の海外代理店の人たちが現場に駆けつけて盛り上げてくれるなど、(活動が)世界に評価されていることを実感しました。今後も是非続けてゆきたいと考えています。
チーム代表兼1号車ドライバー 菅原義正/照仁が頑張って1位を獲ってくれ、自分も完走出来ました。この成績にはびっくりすると同時に満足です。みなさんのご支援・応援に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。それにしてもゴールで雨が降るとは思っていませんでした。南米らしいハプニングですね。
1号車ナビゲーター 杉浦博之/ゴールのポディアムに立つことが出来て嬉しかった。人がたくさんいてテンションが上がりましたね。激励に駆けつけてくださった近藤会長、藤井専務に感謝しています。ナビとして今後も成長するため、ここからがスタートだと考えています。
2号車ドライバー 菅原照仁/かなり厳しい状況の中で結果を残せたのは、応援してくださるみなさんのおかげだと思っています。ポディアムでは大雨が降りましたが、20回連続完走ということに満足することなく(この雨のように)全てを洗い流し、また新たな取り組みに挑戦してゆきたいと思います。
2号車ナビゲーター 鈴木誠一/無事に2台が完走し、結果が残せてひと安心です。クルマは大きく壊れることはありませんでしたが、改良してきたつもりでも水温が上昇する場面もあり、難しさを実感しました。
メカニック 門馬孝之 (日野自動車 海外部品・サービス部)/本当に2台がきっちり走ってくれ、トラブルもなく良い成績を残せて大満足です。(1台がリタイアした)前回のリベンジが達成されました。ともあれみなさんに感謝の気持ちです。
同上 山本昌良 (同上)/無事にゴール出来て嬉しいです。メカニック全員怪我もなく、2台揃っての完走には達成感があります。ラリーの現場は初めてだったのでがむしゃらにやってきたつもりですが、スペイン語の話せる自分が役に立った部分もあったかなと思っています。
同上 山王隆史 (横浜日野自動車)/昼夜が逆転するラリー現場の生活は分かってはいましたが、疲れが取れなくて大変でした。ただ、作業的にはブレーキ周りの分解を繰り返しやったほかは大掛かりな作業はなく、車両が完成度高く仕上がっていたと思います。
同上 橋場 弘 (石川日野自動車)/パルクフェルメに納められたトラックの台数が少なくて、ラリーの過酷さを実感しました。今回2回目(派遣)の自分としては、他のメカニックに対しビバークでの準備作業の段取りなどアドバイス出来た部分もあったかと思います。疲れましたが、ポディアムに来るとそれが吹っ飛ぶ感覚は以前と変わらないですね。
同上 末次健一 (広島日野自動車)/9月に車両製作から関わって今日まで長かったです。ポディアムではゴールを実感しました。雨はすごかったですが、それも良い思い出です。今回現場を担当してみて後半の1週間から慣れて調子が出始めた印象でした。日野レンジャーの改良点も分かったので(チャンスがあって)もう一度派遣されたらより効率的に動けると思います。